起立性調節障害という病名をご存知でしょうか。
起立性調節障害とは思春期の特有の自律神経系の疾患で、朝起きれなくなる病気です。朝は調子が悪く、午後に症状が回復し、夜は完全に元気を取り戻すのが主な症状です。こんな病気あるのか?と疑いたくなるかもしれませんが、私は中学1年生の時にこの病気だと診断されました。
起立性調節障害は全国で約100万人もいるとされ、大人の目からは気付かれにくいです。放置すれば症状は重症化し、最悪の場合寝たきりや長期の不登校を引き起こす厄介な病気です。
自分の子供がこういった「朝は体調不良で起きられずに学校を欠席や遅刻をするのに、夜は元気になる」という症状に心あたりがある場合、起立性調節障害を疑ってみてください。この記事では、朝起きれなくなる病気、起立性調節障害がどんな病気なのかを解説していきます。
高校生・中学生が朝起きられなくなる病気、起立性調節障害
起立性調節障害の代表的な症状は朝起きれないことです。
朝どれだけ声をかけて起こしても、意識がハッキリせず、無理に立ち上がっても気分が悪い、目眩、立ちくらみなどで意識が朦朧とし、頭痛や腹痛、下痢などを訴えることもあります。
慢性的な頭痛、日常生活の中で立ちくらみ、急な息切れ、動悸、食欲不振、乗り物に酔いやすい、顔色が青白いなどの症状が出ます。
症状が強い場合、朝はどれだけ声をかけても目を覚ますことすらなく、力づくで起こそうが何をしようが、子供はぐーぐー寝たままで、しかも子供は翌日になってもそのことを覚えてもいないということも珍しくありません。
起立性調節障害の代表的な身体症状は、
- 朝起きれない
- 頭痛
- 全身倦怠感
- 立ちくらみ
- 目眩
- 入眠困難
- 腹痛、下痢
- 失神
など様々あり、特に高温多湿下、午前中の起床時、入浴後に立ちくらみや目眩、頭痛や気分不良が多く出るのが特徴です。
起立性調節障害の特徴をさらに詳しく
起立性調節障害は症状の出方にも特徴があります。それは、午前中に症状が強く、午後になると回復していくということ。
朝は体調不良を訴えて起きれず、お昼を過ぎたあたりでようやく起きてきて、午後になると回復し、夜になるとエンジンがかかってきて、テレビを見てゲラゲラ笑う。
明日は学校に行くからと言いながら夜更かしして眠ろうとせず(眠れない)、翌朝には再び体調不良を訴えて欠席や遅刻が続く…。
これはまさに起立性調節障害の典型例で、学校の成績も下降していくのも特徴の1つです。
起立性調節障害とはどんな病気なのか
起立性調節障害は自律神経の異常で引き起こされる身体疾患です。
自律神経のバランスや働きが正常でないため、朝起きた時に身体を目覚めさせる機能が低下してしまい、血圧が下がり血流が滞ります。
その結果、脳をはじめ全身に十分な血液が確保されず、目まいや意識の朦朧、気分不良など様々な身体症状を引き起こします。
午前中は体調が悪く、午後になると回復し夜遅くに覚醒のピークになるのは自律神経が働くリズムに異常が出ているからで、その結果、生活リズムが狂って昼夜逆転となります。
夜早く寝れば早く起きれるはずだと普通は思うのですが、この病気は本人の意志に関係なく夜に身体が完全に覚醒してしまうため、布団に入ろうが眠ろうと頑張ろうがやはり眠れません。
そのため、起立性調節障害の子供の半数以上が不登校を伴っています。
思春期に多い起立性調節障害、10人に1人はこの病気か
起立性調節障害は小学校高学年~高校生あたりに多い思春期特有の病気です。私が起立性調節障害と病院で診断されたのも中学1年生のときでした。
日本学校保健会の調査によると、中学生女子の中では25.6%、全体の約4分の1の生徒に起立性調節障害の症状が出ており、その割合は1994年から2012年までのここ30年間でなんと10%も増加しています。
また、起立性調節障害の患者数は思春期全体では10人に1人、概算では全国で約100万人の患者数が要るとされています。(「改訂 起立性調節障害の子どもの正しい理解と対応」のまえがきより引用)
血圧などを測った正確な診断ではないのですが、自覚症状から推測した子供の年代別にまとめた起立性調節障害の症状が出ている子供の割合がこちらです。
児童・生徒の起立性調節障害の症状割合 | ||
高校生 | 男子 | 21.7% |
女子 | 27.4% | |
中学生 | 男子 | 16.9% |
女子 | 26.6% | |
小学校 5・6年生 | 男子 | 2.2% |
女子 | 3.5% | |
小学校 3・4年生 | 男子 | 0.8% |
女子 | 1.7% | |
小学校 1・2年生 | 男子 | 0.9% |
女子 | 0.5% | |
日本学校保健会「平成22年度児童生徒の健康状態サーベイランス事業報告書」2012より |
自分も周囲の大人も気付いていない軽症程度も含めると、かなりの割合で起立性調節障害の症状が出ていることがわかります。
起立性調節障害は知名度が低い割に身近に多い病気なので、決して少数の子供にだけ発症する病気ではありません。
起立性調節障害は治る病気なのか?
嫌な情報ばかり並び立ててきましたが、起立性調節障害は命に関わることはなく、一生付き合うような病気ではありません。思春期のうちは苦しめられても、大人になれば回復します。
軽症であれば数ヶ月の治療で症状も消えますので、早期発見と適切な治療を施す事が重要です。起立性調節障害は軽症でも些細なきっかけで病状があっという間に進行してしまうからです。
さらに中症~重症になると即効性のある治療方法はなくなりますから、やはりこの病気に心あたりがある場合は早めに医療機関を受診することが大切です。
起立性調節障害は思春期に特有の病気ということで、小児科で専門に治療してくれます。心療内科や精神科などは専門外なので、誤診も多いですから必ず小児科を受診しましょう。
症状に心あたりがある場合は医療機関を受診し、診断と治療を
この記事を読んでみて、「ひょっとしてうちの子も、起立性調節障害ではないか」と疑いが出てきている場合は、医療機関を受診してください。
「もしかしてうちの子も?起立性調節障害の診断方法とサブタイプ」の記事で、実際の診断や検査の方法、問診チェックリスト、起立性調節障害のサブタイプについて紹介していますので参考になるかと思います。
しかし正確な診断となると起立試験で数値を計測しないと判断できないため、やはりセルフチェックだけでは限界があります。
当サイトの記事を色々読んでみて、やはり起立性調節障害の可能性が高いと疑われる場合は、小児科を受診して検査し適切な対応を取ってもらうのが良いかと思います。